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FIRSTのSS「葵と理奈ちゃん」

久々にSSです。今回は本編で絡みがほとんどなかった葵先輩と理奈でいってみました!
それではどうぞ!

 
 葵先輩と理奈のからみ。

「こんにちはー」
「はい~、こんにちは~」
部室に入ると、美空先輩が作業を止めてこちらに笑顔を向けてくれる。
わたしも微笑み返すと、机に荷物を置きつつ問いかける。
「あれ、先輩一人だけですか?」
「はい~。今日はあやかちゃんも蛍ちゃんもクラスの用事があるらしくて遅れるそうです。あと、百々ちゃんは出張でいません。春ちゃんはどうしました~?」
「あ、えっと日直なので遅れるそうです」
「そうですか~」
美空先輩は止めていたペンを再び動かし始める。
「……」
「……」
「(うわ、どうしよー。なんか気まずいよー。
そういえば、わたしと美空先輩って本編でも殆ど絡みが無かったし、何話せばいいんだろう?)」
「ーーーーところで」
「は、はいっ!?」
不意に話しかけられ、声を裏返らせてしまう。
「理奈ちゃんって、本当にいっぱいご飯食べますね~」
「そ、そうですね」
「嫌いな食べ物とかないんですか~?」
「わたし、実は茄子がダメなんですよー」
「へぇ、でも茄子は体にいいから、食べなきゃだめですよ~?」
「は、はい。すいません……」
「……」
「……」
「(うぅ、先輩ってば笑顔を絶やさないけど、絶対気まずそうだよー。はやくきてくれー!春ちゃーん!)」
わたしは話題をひねり出そうと、先輩の特徴を思い浮かべる。
先輩といえば、一番背が高くて、たった一人の三年生で。
おっとりしてるけど、芯はしっかりしている頼れる部長さんで。
三つ編みで、カチューシャで。
「(あ、そういえば!)」
「先輩、巫女さんていつもやってるんですか?」
「はい~、毎日、帰ってからお勤めがありますので~」
「うわ、すごいですねー。大変じゃないですか?」
「いえいえ~。確かに最初は大変でしたけれど、もう馴れましたから。
それが日課になれば、負担になることなんてないですよ~」
「でもでも、毎日制服から巫女服に着替えて、そして終わったらまた着替えてって、面倒じゃないですか?」
「アハハ、毎日巫女服着ているわけじゃないですよ~。……あれ、もしかして理奈ちゃん」
美空先輩がペンを止め、キラキラした瞳を向けてくる。
「巫女服に、興味がありますか?」
「い、いえっ!全然ないですっ!」
力一杯否定してしまう。
あぶない、巫女服に興味あるとか、コスプレオタク趣味な人だと思われるところだった。
お姉ちゃんや実花さんならともかく、そういう趣味だと思われたくない。
「そう、ですか……」
先輩は視線を下げ、肩を落としてしまう。
ペンを走らせる音に、先ほどの勢いはない。
「……」
「……」
「(うぅ、ちょっと強く言い過ぎたかな……。別に着たくないわけじゃないけど。ただ、そっち系の趣味だと思われたくないだけ。
たしかに巫女服そのものは、キレイでカワイイと思う。だから、その、趣味とかじゃなくて、ちょっとくらいなら、着ても、いいかな、なんて。そう、着てくれないことに、先輩が悲しそうな顔をしているから。先輩に喜んでもらうために着る、ということなら!)」
「あの、先輩」
「……なんですか?」
「ほ、本当は、巫女服、興味あったり、します」
我ながら、露骨にひきつった声だ。
「本当ですかぁ!?」
がたん、とイスを鳴らして顔を近づけてくる。
目の輝きは、先ほどの倍はあろう。
思わずたじろいでしまうが、とにかく首を縦に振って肯定した。
「やったぁ~!よかったわ~、これで理奈ちゃんのぶんも用意しておいたかいがあったわ~」
「へ?」
「それじゃ理奈ちゃん、部活が終わったらさっそく私の神社に来てください!すぐに着せてあげますから!」
「え、あ、あの、はい」
「ウフフフ、いいわぁ、これで部員の子をみんな巫女さんにできるわぁ、ウフフフ…………」
「(なんか先輩の見ちゃいけない姿を見た気がするよー!)」
おののいていると、がちゃ、と部室のドアが開く。
「こんにちはー!鈴原せんぱーい!いますかー!」
「は、春ちゃん!」
わたしは思わず春ちゃんに抱きついてしまう。
「り、理奈ちゃん、どうしたの?!」
「うぅ……今は何も言わずに抱きしめてほしいよー……」
「う、うん?」
春ちゃんの登場に安堵し、抱擁で落ち着きを取り戻す。ひとまず、この場の気まずい雰囲気は脱した。
しかし、先輩と変な約束をしてしまったことが気に掛かる。
おかげでその日の部活は、時間が過ぎていくことが逆にわたしをそわそわとさせてしまうのだった。

帰りは当然、美空先輩と一緒になる。道中、気まずい雰囲気が再発すると思っていたが、先輩の巫女服語りマシンガンをぶっ放され、間が持たないことなど皆無だった。
無言よりはいいのだけれど、おかげで巫女さんとか巫女服とかに詳しくなってしまった。それどころか、先輩の説明方法が良かったせいか、興味まで持ってしまう。
「って、(いけない、いけない!またオタクっぽい趣味に足を踏み入れるところだった!巫女服はあくまで先輩のため、あくまで先輩のため……)」
自己暗示をかけると、ついに先輩の神社に足を踏み入れた。

「(ふうん、なるほど、巫女服ってこうなってるんだー)」
先輩に巫女服を着せてもらう。服の構造が珍しいので、着方にも興味をもつ。全身が写る姿見に、まるで見たことない美少女がたたずんでおり、ときめいてしまう。
「それじゃお約束ですけど、箒で神社の掃除をお願いしてもいいですか~?」
「はい。せっかく巫女さんになったから、巫女さんぽいことしてみたいですし!」

わたしはほのぼのとした気分で、神社の掃除を始める。場所の空気も手伝って、わたしに巫女さんとしての雰囲気をさらに膨らませていく。
袴のロングスカートみたいなひらひら感が馴れず、言いしれぬ楽しさを覚えてしまう。
ーーーーあぁ、わたし今、すっごい巫女さんだー。
顔がにやけてしまう。なんだかんだで、普段できないことをするって言うのは楽しいものだ。
「あ、理奈」
「えっ……お兄、ちゃん?」
聞き覚えのある声に顔をあげ、背筋を冷たいものが走る。
――――お兄――――ちゃん―――――――?
なぜいる。なぜきた。なぜ今日来た。なぜわたしを見る。ちがう、巫女さんが好きでやってるんじゃない、巫女さんに興味がある、じゃない、巫女さんのために葵先輩を着ることを強要されーーーー。
思考がパンクしているなか、お兄ちゃんは目を丸くして問う。
「何してるんだ、こんなところで」
わたしは思わずオウム返しする。
「……何してるの、こんなところで」
「それはこっちの台詞だ。なんで巫女服着てるんだよ」
わたしは答えに詰まってしまう。
するとお兄ちゃんはニヤリと歯を見せる。
「ははーん、理奈ってば巫女服に興味あったんだ」
「ち、ちが、これは、成り行きで、その……」
「理奈ってサブカル系趣味の否定派だと思ってたのに。本当は、大好きだったんだな」
「ち、ちがうよーっ!わたしはただ、先輩を悲しませたくなくて」
真っ赤な顔から否定の大砲をぶち込むが、お兄ちゃんには通じない。
「いいよ、恥ずかしがらなくて。自分の趣味を人に話すのって、結構勇気がいるからな。今日は自分に正直になってみたんだろ」
「それは、間違いじゃないけど……」
「だけどさ、理奈」
「うんっ?」
お兄ちゃんは、顔のニヤツきをさらにこぼす。今にも吹き出しそうだ。
その口から飛び出た言葉は、わたしの意識をとばすのに十分な効力を持っていた。
「こういうこと隠れてするなんて、案外むっつりだったんだな」
むっつりだったんだな。
むっつりだったんだな。
むっつりだったんだな。
わたしは額に縦スジがはいるほど青ざめ、口をあんぐりと開けてしまう。神社なのに、鐘のなる音がした。
お兄ちゃんは、そんなわたしを置いておき、スタスタと通りすぎる。
「あんまり帰りが遅くならないようにな。
それじゃ、俺は先輩に届け物をしたら帰るから。せいぜい楽しんでくれ、『むっつりなちゃん』」
背後で、お兄ちゃんが大笑いしている声が聞こえる。
……むっつりなちゃん。
わたしの精神はぼろぼろに打ち砕かれ、理性がどこかへと流れ出ていった。
わたしは拳を握りしめた。
「(もーいーもん!二度と巫女服なんて着るもんか!)」
ーーーーこうして、美空先輩との小さな絡みは一段落を終えたのだった。
終えた……はずだった。
このまま美空先輩との接点が続くとは、思いもしなかった。
巫女服を着ない。
その断固たる決意は、脆くも崩れ去る。
神社に生息している河童が、わたしの制服を盗んでしまったのだ。
しかたなく、先輩が巫女服を着たまま帰っていいと言ってくれた。
……気のせいか、以前お姉ちゃんにも同じ手口を使っていなかっただろうか。
家に帰れば、当然、撮影会が始まる。
滅多にこういうコスプレをしないわたしが、巫女服など着ていたせいだろう。
沙弓さんが、赤く染まるハンカチを鼻につっこみながら、カメラのフラッシュを放っていた。
わたしは巫女服好きの烙印を押されてしまう。
もはや、世間にどんな弁明も通用しないことを悟る。
全ては美空先輩の手のひらで踊らされ、わたしの意志すらもその歯車のなかで回っていたにすぎない。
――――それでも、どうしてだろう。
怒りを感じるべき対象の巫女服に、愛着が湧いてしまうのは、なぜだろう。
それはきっと、巫女服は決して悪くないことを知っているから。
巫女服の良さがあまりにもすごいから、先輩が少し暴走してしまっただけ。
巫女服に包まれていれば、なぜだかそんな気になってしまう。
「(もう、巫女服に興味津々ってことでいいや……)」
こうしてわたしは先輩の思惑通り、巫女服好きな少女へと生まれ変わったのだった。
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FIRSTのSS「レガッタ大会」

またまたSS記事。
短めだけどどうぞー。



「というわけで、今日はみんなでレガッタの練習です~」

「はぁ……うちの学校も唐突ですねぇ」

……どうしてこうなったのか、理由は簡単だ。
岩雫高校の部活対抗レガッタ大会が開催されることになった。
5人1チームということで、都合のいいことにうちは部員が5人。
優勝賞金は部費アップ。
我らが新聞部は部費が下から数えたほうがいいくらいの部活。
活動的には少なくて当たり前な部活ではあるが、そろそろPCの買い替えという大きな買い物をしたい。
そんな動機を胸に、挑むのであった。


「蛍ー、あたし思うんだけどさ。
この大会の様子を取材するのが、あたしらの仕事じゃないの?」

蛍は扇子を広げて口元を隠すと、勝ち誇った眼差しでのたまう。

「あら、学校の全部活参加という名目の大会ですのよ。
そこに例外なんてありませんわ。
仮にどうしても参加させないというのであれば、相応の補償があってしかるべきですわ」

謎の説得力に納得すると、葵先輩から分担が言い渡される。

「えっと、私が舵取りのコックス、私から見て右側……バウサイドが理奈ちゃんと春ちゃん。
左側のストロークサイドがあやかちゃん、蛍ちゃんね」

「はい質問でーす」

「理奈ちゃん、どうぞ」

「新聞部で一番力持ちな美空先輩が、どうして漕がないんですか」

「うふふ、大丈夫よ。
ちゃんと当日までに鍛えますから」

「なんか理由になってない気がするんですけど」

葵先輩は理奈の一言に眉ひとつ動かさず笑顔のまま答えた。

「みんな、ちゃんと漕がないと、後でどうなるか……。
わかっていますよね~?」

全員の背中からゾクッという擬音が飛び出た。
誰も文句など言えなかった。



「さてと、それじゃさっき言った順番に座ってくださいね~」

そんなわけで練習のため、川にやってきた。
現地では各部活が練習できるようにと、先生方が準備万端で待ち構えていた。
来ればすぐさま練習開始できるというわけだ。

「わ~、理奈ちゃん、オールってこんなでっかいんだね!」

「うんうん、薙刀よりぶっといね!」

「私こんなの漕げるかなぁ」

「大丈夫、私と息を合わせれば大丈夫だから!
今日は私がリードするから、春ちゃんはそれに合わせればいいんだよー」

「うん、理奈ちゃんに任せちゃうね!」



「なんでこの私があやかさんの後ろなんですの!」

「えー、たしか蛍のほうが前じゃなかたっけ?」

「へっ?さ、最初から知っていましたわ!
あやかさんが忘れていないか、試しただけです!」

「ふーん、へー、そー。
ま、後ろのほうが漕ぐときメインの力になるみたいだから、
蛍なら安心ね」

「当然ですわ!この私に任せておけばよくってよ!」

あやかはうまく蛍をのせることに成功し、ほくそ笑む。
そんなこんなで、全員乗り込んだ。


「それじゃ、手を放しますから。
そしたら漕ぎ始めちゃってください」

係りの先生に言われ、いざ海原ならぬ河原へ漕ぎだす。

「いいですか~。私がキャッチって言ったらオールを入れて、そーっれ!で漕ぐ。
この繰り返しだけですからね~」

「はいキャッチ!そーっれ!キャッチそーっれ!」

「ちょ、うわ!はやっ」

「うわうわ、ちょっとまって」

全員あわてたものの、なんとか前に進んでいく。
そのまま、ぐるぐるぐる、同じところを何度も何度も行き来する。
最初はズレていたタイミングも、次第にあってくる。
しかし……。

「はいキャッチ!ほら、キャッチ!
どうしたんですか~、誰も漕いでませんよ~」


「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ……あたしもう無理」

「わたしもだよー」

「わ、私なんて、手がもう、あがらな……」

「ふ、ふん、これしきのこと、私が……」

葵先輩のスパルタに、全員が疲れ切っていた。
葵先輩ってば、部費というかお金のことになるといつもこうだ。

「もう、しかたねぇです。
少し休んだら、再開しますよ」

お昼頃に初めて、陽が傾いている。
いったい何時間練習する気なのか。



「ぐあぁぁあ!?!」

練習再開直後、とても女の子がしていいものではない叫び声が響き渡る。

振り向くと、春ちゃんの腹にオールの柄が突き刺さっていた。
ハラキリであった。

「コフッ……り、理奈ちゃん……私は、もう…………」

「は、春ちゃん!だめ、しゃべっちゃだめ!」

「も、もう、助からない……。
あとは、理奈ちゃんたちだけで……おねが……」

「は、春ちゃああああん!
うぅ……ごめんなさい、わたしは春ちゃんの屍を陸にあげてくるよー」

迫真の演技だが、思わず涙が出たりはしない。
どうやら、葵先輩のスパルタに耐えかねて、一芝居打ったらしい。
しかし、葵先輩には通用しない。

「ふたりとも、遊んでないでさっさと漕いでくださいね~」

「ウ、ゴメンナサイ……」

不動の鬼教官、現る。
もはや、我々に自由などないのだ。
しかし、どうやら春ちゃんが限界のようだ。

「うぅ、私は、ダメです、と、トイレぇ……」

涙目で訴えている。
足のもじもじ具合から、マジらしい。

「まったく、集中力が足りませんわ」

「いや、そういう問題じゃ……ていうか、蛍何両手ついておしり浮かせてるの?
ははーん、さては痛くなってきたわね」

「な、いえ、そういうわけじゃ……」

「大丈夫、あたしもさっきから痛くてさー」
そういって、オールを止めていた金具に手をついておしりを浮かせる。
これで少しはもちそうだ。

「うぅぅ、も、漏れちゃう……」

「み、美空先輩!本当に、いったん陸へ!
春ちゃんが限界だよー!」

「それじゃ、陸まで漕いで行きましょう」

「い、イヤぁあ、もう無理無理、むりぃ!」
春ちゃんは縛っていた足をほどき、この場から逃げようとする。

「ちょっと、ダメですよ~、漕がなきゃ~」

「ひいい、許してぇえ!」
パニック状態の春ちゃんが、暴れてしまう。
当然、船は左に右にと揺れてしまう。

「わっ、ちょ、やめ!」
バキッ!

……バキッ?

あ、金具が壊れた。

そのままオールが変な方向へ曲がり、変な力が加わり、船は見事にドリル回転する。

全員が水中へダイブした。


「キャアァァァ」

「うわぁあ」

「ひいい!」

黄色い叫びが上がり、没する。
5か所から泡がたつと、全員水面に顔を出す。

「うぅぅ、ひどい目にあったわ……」

「もう、なんなんですのこれぇ!」

「だからさっさと陸に上がればよかったのにー……」

「す、少し漏れちゃったかも……ハハ……はぁ……」

「こ、これでは練習が、優勝が、賞金がぁ~!」

――――その後みんな仲良く風邪を引いたあたしたちは、大会当日、棄権というオチに終わった。














FIRST

FIRSTバレンタインSS

皐月が主役(というか皐月主観の)バレンタインデーネタのSSです。
ギャグですので、お気軽におたのしみください。
ちまちま書いたものを後でつなげたので、どっかおかしいとこあるやも……。
一応、あの人とはあやかのことで、妹さんは理奈のことです。
↓↓とりあえずお楽しみください↓↓



「バレンタインデー?」

私はぽかんとしたまま呟いた。教えてくれた実花さんは、私の返事に驚きを隠せないでいた。
全く知らなかった。
2月14日がバレンタインデーであると言うことを。
昔から各地を見ていて何かイベントがあるように 感じてはいたものの、中身までは知らなかった。
とにかく、実花さんが言うには意中の相手にチョコを渡すとのこと。それも、できれば手作りの方が効果が高いとのことだ。
……何の効果が高いのか今一つわからないが、私の力で幸せになるより自分の力で幸せになった方が深みがあるのと同じ理屈だろう。
なんにせよ、あの人にチョコを渡せばきっと喜ぶに違いない。
私は早速食堂に向かい、料理専門の沙弓さんに声をかけた。
「チョコレートの作り方、ですか?」
沙弓さんは忙しそうに洗い物をしながら、呟きを返してきた。
私は教えてくださいと、もう一度続けた。
沙弓さんはうーんと唸ったり、そうねぇと呟くばかりで返事をしてくれない。
私が沈黙をまもっていると、沙弓さんはいつのまにか洗い物を全てし終わっていた。きゅっと蛇口をしめめタオルで手を拭きながらようやくこっちをむいて答えてくれた。
「失敗しないように、簡単な溶かして型にいれるだけのものにしましょうか」
「簡単なのでも……思いが小さくなったりしないの」
「そんなの関係ないですよ。どれだけ手間をかけたより、どれだけ思いを込めたか、ですよ」
沙弓さんの言葉に納得させられると、製作の準備に入る。

沙弓さんは丁寧に教えてくれた。
鍋にチョコをいれ、よくかき混ぜた後に型に流し込む。実に簡単な作業だ。
私はてのひらよりも小さい、ビスケットのようなチョコを見て、どこか物足りなさを感じた。
ーーーーこれでいいのだろうか。

沙弓さんが呼ばれ、離れてしまう。
監督がいなくなったとはいえ、私のやることに変わりはない。
……ない、はずであった。
私はどうも今のチョコに納得がいかない。
沙弓さんは簡単でいいと言っていたが、これだけ簡単だとかえってもう一手間いれたくなる。
――――そうだ!
もっと他のものもいれてみよう。
私の味を作れば、もっとしあわせになってくれるはず。
考えるが早いか、私は調味料の戸棚を開けた。
中には調味料の入った小さなプラスチックの容器がところ狭しと並んでいた。
どれが美味しいだろうか。料理に疎い私にはこしょうと塩の違いもわからず、とりあえずラベルの色で決めることにした。
黒の「blackpepper」というのに、赤い大きめの粉、黄色の粉末に白い粉も混ぜる。ーーーーうん、色合いはなかなかだ。さらに見たことも無い文字の書かれたものや、味噌も数種類混ぜる。あわせ味噌だ。
少し表面がゴツゴツなったものの、歯応えが良くなった証拠だろう。
私は得意になって次々とオリジナルチョコを量産していった。

私がチョコの製作を終え、梱包しているところにようやく沙弓さんが戻ってきた。
沙弓さんは出来上がりを褒めつつ、汚したキッチンをちゃんと掃除するようにとつけ加えた。
どうも完成品を試食出来ないのが気がかりだったようだが、これで失敗はまずないだろうと一人で納得した様子だった。
私は一日千秋の思いで明日を待った。

当日、珍しく朝寝坊してしまった。今日渡す瞬間をイメージしていたら、緊張してさっぱり眠れなかったのだ。私はその気もなくあくびをしてしまう。夜行性の私が寝不足というのも変な話だが、それだけ気張っていたということか。
本当は朝一番で渡そうとおもっていたのだが、どうやらあの人はもう学校に行ってしまったようだ。
追いかけて渡すのもいいが、また幽霊騒ぎになるのも困る。
私は仕方なく、だが眠気も手伝って再び布団に寝転んだ。

……。
…………。
………………。
「……きぃ…………よぉ」
声が、する。
「……皐月い……きろよぉ」
暖かい声。心が休まる声。
「皐月ってば、起きろよぉ!」
あーーーー。
私ははたと意識を取り戻し、起き上がる。
目の前に、夜の姿になったあの人の笑顔があった。
「おはよう」
私は一瞬で顔をほてらせた。
息をのみ、すぐに返事ができない。
あの人が首をかしげているのを見て、とっさに口を開く。
「お、お………………おはえりなさい……」
ーーーー何を言ってるんだ、私は!
するとあの人はぷっと吹き出して一笑いしてしまう。
私は余計に顔が赤くなった。
あの人はご飯の支度ができたから、食べたかったら来てくれと伝え、出ていこうとする。
「待って……!」
私は急いであの人の手をつかんだ。
ーーどうしよう。こんな状態で、ちゃんと渡せるかなーー。
私が顔を伏せていると、あの人が先に口を開いた。
「どうした、皐月」
あの人は向き直り、中腰になって私を覗きこんだ。
ーー渡さなきゃ。渡さなきゃ。いま、渡さなきゃーー。
「あの…………わ、わた…………」
「綿……?」
私は首を大きく振り、違うと訴える。
「わ、わたす……大切な…………ものが」
私はもう一度しゃべる順番を浮かべようとする。しかし、真っ白に染まってしまい、そんなスペースはなかった。
「渡すもの……?なんだ、そんなに深刻なものなのか!?」
あの人は顔をこわばらせた。
私は弁解したくても口が動かず、でも安心させるために懐に忍ばせたチョコの包みを差し出した。
あの人は一瞬目を見開くと、反射的に手が出たのか受け取った。
「これは……?」
私は顔をあげるも、まっすぐ見ることができずに視線をそらして答えた。
「開けて……みて」
あの人はきょとんとしたまま、不思議そうな面持ちで丁寧に包装を破る。
中から出てきたものにあの人はあっと声をあげた。
「私の気持ち……受け取って……」
私が言うと、辺りが沈黙に包まれた。どうして返事がないのだろうか。まだ数秒しかたっていないのに、長い間立ち尽くした気分だ。
私は耐えきれず、ゆっくりあの人の顔を見た。
するとあの人は、待っていましたと言わんばかりに微笑み答えた。
「もう、受け取ってるよ」
ーーーーあ、あ、ああぁ!!
「あ、ありがとう……!」
全身の重みがふっと消えた。気持ちがどんどん弾んでいく。
暗い洞窟から、ようやく外へ出た気分だ。
私は強ばった顔を一気に緩ませ、あの人に抱きついた。
「ねぇ、食べてみて」
あの人はまかせろと言い、奇妙な色合いをしたチョコを頬張った。
ごりごりという音が響くなか、私は感想を急かした。
だが、あの人は無言でごりごりと食べた。
ごりごり。ごりごり。
ごりーーーー。
刹那、あの人は鬼気迫る面持ちをしたかと思うと、思い切り天を向いた。
「ぐぎゃぁぁおおおぁぁゃぉぉうぅ!!!!?」
あの人が、吼えた。
血管が浮き出るほど力一杯、家中に響き渡る声量で。
私は叫びながら狂ったように胸をかきむしるあの人に、必死に呼びかけた。
だが私の声が届くことなく、あの人は泡をふいて倒れ、動かなくなってしまった。
「どったの~?!」
先ほどの断末魔を聞きつけた妹さんが現れる。私は事情を説明すると、妹さんはなんだと肩の力を抜いた。
「お兄ちゃんてば大袈裟だよー」
妹さんは倒れたあの人に構わず、地面に転がったチョコをひとつ拾い、頬張った。
妹さんは余裕の笑みを浮かべて述べた。
「ほらおいしいじゃん。皐月ちゃんにあやまーーーー」
…………?
突然、妹さんは私に背を向けたまま動かず、仁王立ちしてしまう。
「どう……したの?」
「あ、あ、あ、あ、あーーーー」
私は不信に思って、妹さんの肩をつかみ、こちらに向きなおさせた。振り返った姿に、私は小さく悲鳴を上げた。
妹さんは全身をプルプルと震わせながら、両目を上にひんむき、くちがだらんと開いていた。
「あ、あ、あ、あ、ああーーーーあべしっ!」
妹さんは吹き飛び、あの人と同様に泡を吹いて倒れてしまう。
妹さんはピクピクと体を痙攣させ、会話らしい言葉も喋れず気が触れてしまっていた。
どたどたと、廊下を駆ける音が聞こえる。
ーーあぁ、次の犠牲者が来たようだ。
この日以後、私はチョコはおろか、料理全般の禁止となった。

FIRSTのSS「クリスマスパーティ」

SS「クリスマスパーティ」
なぜか男あやかをみんな知っているのに春ちゃんが家にいないがあまり気にせず。(特に何編後とか意識はしてない)都合、春の呼び方と態度がおかしいかな。
パーティの内容も書いてたけど、無駄に長くなったので全カットしました。
↓それではどうぞ↓


――本日は鈴原邸でクリスマスパーティがある。
部活中、誰かがパーティでもやりたいと言ったのがきっかけで、あっという間に話が出来上がったのだ。
あやかは準備に追われていた。どうしてもっと広い蛍の家でやらないのだろうと思っていたものの、万が一何かあった時、家の方が安全だとも思い至り、何も言わずに承諾してしまった。
おかげで朝から大慌てである。メイド達に混じり、だが彼女たちの足を引っ張らないようてきぱきと作業を進めていた。

「ねー実花ぁ。天井の飾り付け終わったら次どうしたらいい?」
あやかはキャタツに座ったままツリーに飾りをつけている実花に指示を仰ぐ。
「あやか様、少し休んでいてください。朝からそんなに飛ばしていたら、パーティ本番で持ちませんよ」
実花は作業を止めずにそう返事をする。
あやかはまだどうしようか悩んでいたが、ちょうどキャタツを支えていた茜ちんにまで大丈夫ですからと言われ、しかたなく部屋で休むことにした。



「ふー、疲れたなぁ……」
あやかは布団の上に倒れこむ。
体勢も変えず、もぞもぞと携帯を取り出すと何件か来ていたメールを開く。

『鈴原先輩!少し早めに行きます!いろいろ持って行きますね!』

『あやかちゃん、キューちゃんも連れて行きますね~』

『あやかさん、もしものために私がありとあらゆる物を用意させていただきますわ』

「…………」
あやかはしばらくぼうっと眺めた後、あて先を全員に指定して『は~い』とだけ書いてさっさと送信してしまう。
疲れていたのだろうか、携帯の画面を見るのも辛くなっていた。
――――そのまま目を閉じてしまうと、意識も自然と遠のいていた。



「……ちゃん……てよ」

「お兄ちゃん、起きてよ!」

「……!」
あやかは意識が戻ると同時に飛び起きた。
あまりの勢いに、起こしに来ていた理奈と頭をぶつけてしまう。
お互いに額を押さえつつ、理奈が先に文句を言った。
「うにゅ~、痛いよ、もう……」
「いちち……わりぃ、早く準備手伝わないとって思ったら急いで起きちまった。でも今俺が俺になってるってことは、すっかり終わってたりする?」
理奈は腰に手をあて、しれっと答えた。
「とーぜん。まぁお兄ちゃんには休んでいて欲しかったら、それはいいんだけどね。
さすがに寝坊だよ。早く来てよ、もうみんないるんだから」
「お、おう」
あやかは軽く寝癖を直すと、急かす理奈に連れられてパーティ会場たる居間へ向かった。



「あやかさん、遅いですわ!」
あやかが部屋に入った直後、腕組した蛍から文句がぶつけられた。
あやかは申し訳なさそうにしつつも、ちょっと眠っちゃってと軽い言い訳ですませた。
蛍も本気で怒っているわけではないらしく、まったくもうとだけ言って水に流してしまう。

「せんぱぁ~い!」
蛍との会話からタイミングを計ったように春が飛び出した。
一直線にあやかの胸に飛びつき、彼の胸に顔を何度もスリスリする。
「春ちゃん、少し落ち着いてくれ」
あやかが困ったように言うと、春は笑顔で返事をする。
「はぁーい!」
言うことを聞いてぴたりと行為を止め、すばやく離れる。
相変わらずあやかの言うことはしっかりと聞くらしい。

「こんばんは、えっと、あやかくん」
「こんばんは、葵先輩」
今度は葵があやかに近寄る。葵は男のあやかと話すのが気恥ずかしいのか、少し緊張した様子だ。
一方のあやかは普段とあまり変わらない。
意識してしまう葵は、あやかから視線が離れない。

「はい、そこまでー。お兄ちゃんの席はこっちだよ」
と、理奈があやかの手を引っ張り、硬直を解いた。/_
理奈としては、お兄ちゃんが取られて面白くないのだろう。
葵は名残惜しそうにじっとあやかの背中を見つめていた。

「皆さん。あやか様が最後ですので、乾杯しますよ」
沙弓が手を叩いて注目を集めながらよく通る声で言い放つ。
既に全員のコップには実花や茜が飲み物をついでいた。
後は挨拶だけである。
「それではあやか様、お願いします」
あやかはえっと目を丸くしたが、全員の拍手を前に咳払いをする。
「えーっと、本日は皆様、集まっていただきありがとうございます。
今年はキャラエピの出演のみでしたが、皆様よくがんばってくれました。今日は楽しく疲れを癒しましょう。それでは今後ともFIRSTをはじめSUZUMUSHI作品の発展を祈念して、かんぱ――――」

「キューーーー!!!」

「いぃッ!?!?」

突如部屋に暴走したキュー助が現れた。
あやかはよけるどころか気づく間も無く激突されてしまう。
「きゅ~……」
「ぐ……今日はなんだか痛いのばっかだぞ……」
ふとあやかはキュー助の姿を凝視した。
緑の河童のはずが、妙にピンク色が混じっている。
――はて、変色したのだろうか。
はたして目に映った姿に、あやかは激怒した。
「あぁ!!この野郎、また俺のブラで遊びやがったな!!」
「きゅ!?キュキュー!!」
あやかはパーティそっちのけでキュー助を追いまわす。
料理はひっくり返り、せっかく飾りつけした部屋もぐちゃぐちゃで、すっかり台無しである。
「あぁもう、あやかさんったらすぐ回りの事が見えなくなって!」
「しょうがないですよ~。最近のキューちゃん、寂しかったみたいですから」
「ぶー、それにしても、わたしの食べたかった料理が……」
「私も食べたかったのに……。とりあえずキュー助さんを捕まえるの、手伝います!」
成り行きを傍観する者、がっくりと肩を落とす者、冷静に対処しようとする者とさまざまであったが、なんとかパーティらしい形にすることはできた。

――――来年もできるといいな。

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同人サークルSUZUMUSHIです。オリジナルノベルゲームを作っています。コミケ等で配布予定です。作品に興味がわいたら
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