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オリジナルSS「メイドトレイター」

久々にオリジナルSSです。
内容を3行で言うと。

ストロベリーメイド・栃乙女アリスは改造メイドである。
彼女を改造した秘密結社「フリーメイドン」は人類をメイドに変えて服従させようと企む悪の組織である。
アリスは、人類をメイド化の恐怖から救うために、フリーメイドンと今日も戦う!

という内容です。(おもいっきり仮○○イダーやん)
と言っても、一話目なので直接戦いませんが。
それでは、どうぞ。

↓↓↓

1話:失われた自分
インターネット上で、メイドの話題になると、さっそうと現れる一人の人物がいた。
その名は≪栃乙女アリス≫。
メイドの歴史や作法の解説はもちろん、服装デザインの評論にも一目置かれる、スペシャリストだ。
栃乙女アリスは、本名ではない。
あくまでメイドを語る時の仮名にすぎない。
現実の本人は、一見すると冴えない男子高校生だ。
休みは家にいて、パソコンにかじりついてばかりの男子である。
彼は、人一倍、メイドについてポリシーのようなものがあった。
彼にとってメイドとは、雷に打たれたくらいの電気が走るほど、心揺さぶる特別な存在だ。

ある日、いつものように彼が自室に籠り、パソコンの前でメイドについての評論のチャットを交わしていたときだ。
「ククク、見つけたぞ、栃乙女アリス!」
キーボードを叩く手を止め、机に膝がぶつかるほどの勢いで振り返る。
驚くのも当然だ。
部屋には、一人しかいない。
いや、部屋どころか、家の中に一人しかいない。
家族は全員海外旅行に出ており、まだ帰ってくるはずがない。
玄関の鍵を閉め、窓はカーテンも締め、昼間から薄暗い部屋で一人、パソコンに向かっていたのだから。
誰かが入ってくるはずなんて、ない。

「誰だ……!?」

かすれた声で、不気味な声の主に問いかける。
怪しげな高笑いの後、エコーのかかった声が放たれる。

「我々は君を捜していた。噂に聞くメイドに情熱をかける人物が、なるほど、こんな男とは思いもよらなんだ。
だが、そんなことは些細な問題だ。
こうして見つけたからには、さぁ、我々と来てもらおうか」

「い、いやだっ!なんなんだ、おまえは!?」

「我々のことが知りたいかね?
クク、おとなしくついてくればわかるさ。
安心したまえ、悪いようにはしない」

「おまえのような得体の知れない奴の言うことなんか、聞けるものか!」

「……そうか、それは残念だ。
だが君に拒否権はない。我々にはどうしても君の力が必要なのだ。
気の毒だが、手段は選ばない主義でね」

すると、ガスが抜けるようなしゅーという音が、部屋のところかしこから聞こえ始める。
奇妙な青い煙が部屋を包んでいった。
とたんに、睡魔に襲われた。
イスから倒れ、重くなる瞼を必死に開けようとする。
おぼろげな視界と意識のなか、瞳にはガスマスクをつけたメイドさんが数人写った。

目覚めると最初に、見知らぬ天井が見えた。
配管やダクトが無数に絡み合い、ケーブルがいくつも延びていた。
天井も壁も、白い無機質な金属でできていた。
体を動かそうとすると、太いベルトが体はもちろん手足をも縛っていた。

「おはよう、栃乙女アリス君。どうだね、気分は」

「ここは……」
まだ朦朧とする意識の中、黒いマントを羽織、角の生えた仮面を付け、『怪しい』を体言した人物が立っていた。
すぐに意識が覚醒した。咄嗟に体が逃げようとした。ぐっと体に力を入れるが、ベルトの力が強く、まるで身動きがとれない。

「元気なようで安心したよ。
はじめまして栃乙女アリス君。そしてようこそ、我が城へ」

「な、何だ、僕をこんなところへ連れてきて、どうするつもりだ!?」

仮面の人物はマントから手を出すと、自分の胸に手を当てた。
「そう怖がらなくてもいい。まずは、我々の自己紹介をしよう。
我々はフリーメイドン!私はその首領と名乗っておこう!」
仮面の人物――――フリーメイドンの首領は、ゆっくりと歩きながら語り始めた。

「我々フリーメイドンは、全人類をメイド化するために、世界中で活動をしている。もちろん、表向きには知られていないがね。
なぜ、全人類をメイド化しなければいけないのか。ふふん、知り足そうな顔をしているね。
考えてみたまえ。
世界から戦争はなくならないし、環境汚染は止まらない。
食料難に始まる人口問題もそうだ。
こういったグローバルな問題を、我々が全人類を管理することで解決しようと考えている。
そのために、全人類を我々フリーメイドンに従属するメイドに改造し、洗脳する!どうだ、素晴らしい世の中が作れるだろう!」

「なんて恐ろしいことをっ!そんな勝手な言い分でっ!
だいたいにして、メイドをそんな事に利用するなんて、許せない!
おまえたちのやることは、メイドではなくただの奴隷を作ることだ!」

「君の主張を聞くつもりはない。
なにせ、これから始めるメイド改造手術によって、君は我々の組織に従順なメイドに生まれ変わるのだからな」

「なんだって!?」

首領が指をパチンと鳴らすと、入り口と思しき壁が左右に開く。
中からは、ナースキャップを被ったメイドさんが数人現れた。
手術器具を入れたカートを押す者、箱型の装置を運ぶ者。
彼女らはそれぞれの道具を配置し終えると、首領の後ろに整列した。

「ご苦労」

「はい、ご主人様」
「はい、ご主人様」
「はい、ご主人様」

全員が同時に、まるで機械のように返事をした。
首領は、マントを広げて言い放つ。

「フハハハ!我々は以前から君に目を付けていた。君にはメイドとしての素質がある!
我々の手術を受ければ、並のメイドとは比べものにならないパワーを得るはずだ!
だからこそ、我々の改造を受け、世界メイド化のために、身も心も捧げてもらう!」

「おまえたちの言いなりになんて、なるものか……!」

「フン、どうとでも言うがいい!改造が済んだら、ただちに洗脳してやる。そうすれば、貴様の意志など完全に消え去るのだ!」
首領の背後にかまえていたメイドたちが、すばらしいわ、さすが首領様、と賞賛の声を上げる。
彼女らは完全に洗脳されているらしく、首領を見つめる目は陶酔しきっているのがわかった。

「さて、始めようか。
なに、安心したまえ。我々の手術ならば、どんな男でもメイド服の似合う可憐な少女へ生まれ変わることができる。
君にとても似合うメイド服も用意しよう。
クククク!クハーハッハッハッハッハ!」

首領は高笑いとともに、外へ出ていった。
残されたメイドさんたちは、笑顔で作業を始めた。

「すぐ終わりますからねー」
「痛くありませんからねー」
「動かないでくださいねー」

それまで怒りに隠れていた恐怖が、全身を覆っていく。

「よせ、触るな!やめろ、やめてくれ!」

「静かにしてくださいねー」
「暴れても無駄ですよー」
「恐いことないですよー」

「この、触るなって、この、放せ、は、むぐっ!!」

よほど五月蠅かったのか、猿轡をはめられてしまう。
そして、一人のメイドさんが注射器を取り出す。

「これを打てば、すぐに気持ちよくなって眠ってしまいます。
そして、目が覚めた時には、私たちと同じメイドになっています。
だから安心して、手術を受けてくださいませ」

「安心などできるか!家族の同意書もないくせに!
おい、やめろ!それを近づけるな、やめろって!やめろ、やめ、あ――――っ!」
途端に、意識は遠のいていった。

再び目が覚めると、先ほどと同じ場所が目に飛び込む。
こんな場所へ連れてこられたのは、全部悪い夢だ。
そう思いたかったのに、耳に響く機械音と、強烈に鼻をつく、古いお屋敷を髣髴とさせるアンティークな匂いが、現実を叩きつける。
五感が戻ってくると、全身に違和感があった。
胸のあたりに膨らみを感じる。
なんとなく、手足が細くなったような感覚もある。
加えて、なんだか股の下がスースーする。
周りに誰もいないか確認すると、恐る恐る、顔を上げて自分の体を見た。
そこには、メイド服を着た少女の体があった。
メイド服は半袖膝丈のワンピースで、イチゴ柄が特徴的だった。
エプロンがアリスタイプなのも含め、きっと名前にちなんでいるのだろう。
他には、肘の手前ぐらいの長さの、エプロンと同じくらい真っ白な手袋をしている。
両足は同様の白いニーソックスを身に着け、スエードブーツを履いていた。
最後に、直接は見えないが、頭を締め付ける感覚は、間違いなくカチューシャをしているからだろう。
メイドに改造されてしまった。
アリスは驚きや怒り、恨めしさや落胆よりも、美しいという感情が巡った。
状況はどうあれ、メイド好きにはたまらないクォリティの代物であったからだ。

アリスは、ぐっと目を閉じた。
今はそんなことを考えている場合ではない。
まだ頭は洗脳されていないのだから、なんとかここを逃げ出さなければ、と決意した。
まるで身動きが取れないでいると、壁の奥から話し声が聞こえてきた。
どうやら、首領とメイドが話をしているようだ。

「彼女の改造は終わったのかね?」
「いえ、まだ洗脳が完了していません。体はそろそろ馴染んだ頃合いかと」
「そうか。ククク、試作したイチゴとの合成メイドを早く見てみたいものだ」
「合成メイドは大変良い出来と存じます。
我々一般のメイドと違い、他の遺伝子と掛け合わせることで特殊な能力を使えます。
それゆえ、常人を上回る能力を持つ我々メイドを、あらゆる面でさらに上回っています」
「そんなことはわかっておる。
問題は、その能力を発揮できるのかどうかということだ」
「必ずやご期待に添えるものとお約束します」
「がっかりさせるなよ、メイド長」

二人が部屋に入ってくる気配を悟ったアリスは、目を閉じて眠っているふりを始めた。

「どれ、姿はどんなものか。
ほほう、これはなかなか、かわいらしいメイドに仕上がったな。
さすが噂に聞こえた栃乙女アリスだ。我々のメイド改造技術もさることながら、素材が良くなくてはこうもなるまい。
ハハハハ!今から奉仕させるのが楽しみだ!
さぁ、メイド長よ、洗脳を済ませるのだ」

「かしこまりました。
では、拘束を解除して洗脳室へと運びます」
メイド長が端末を操作すると、体を縛っていたベルトのようなものが一斉に外れる。
――――チャンスは、今しかない!
アリスはぱちりと目を開け、寝かされていた手術台から飛び上がった。

「なんだとっ!?」
「そんな?!」

アリスはしてやったりと笑みを浮かべつつ、内心では自分自身に驚いていた。
手術台から寝たままの体制で飛び上がったうえ、着地もまったく問題なかった。
こんな動きができるとは思わなかった。
改造された体は、明らかに身体能力が上昇していた。

「ボクは、あなたたちに洗脳されるつもりはない!」
アリスはハイトーンの愛くるしい声で宣言すると、出口に視線を合わせ、突進した。
先ほどのジャンプでわかっていた。この体なら、突破できると。
アリスの光線のような体当たりは、易々と出入口を吹き飛ばした。
部屋の外は、長い廊下が続いていた。
一定の距離ごとに明りがあるものの、奥がどうなっているかは見えない。
だが、アリスはすぐさま廊下を駆け出した。

「おのれ……!
えぇい、何をやっておるか!
早く奴を捕らえよ!」

「ハハッ!」


「…………」
アリスは自分の体に再度驚いた。
全力疾走しているのに、まったく息が切れない。
「(これがフリーメイドンの、改造メイドの力……)」

廊下の明りが、それまでの昼白色から赤い回転灯に変わる。
けたたましいサイレンが響くと、先ほどのメイド長の声が響き渡る。

「改造直後のメイドが逃げました。
皆様、直ちに捕まえてください。
特徴は、イチゴ柄のアリスメイド服を着用しています
繰り返します、改造直後の――――」

アリスは不意に立ち止まった。
それは、廊下沿いにいくつもある部屋の一つが開いたからだ。
すぐに体が臨戦態勢となる。
しかし、その勢いは、肩透かしを食らう。

「おい、あんた!」
アリスよりも10は上だろうメイドが、扉を小開けにして手招きしていた。
罠かもしれないとも思ったが、見つかったのなら仲間を呼ばれるはずである。
そう判断して、すぐに彼女の意思に従った。

「ここなら、見つからないだろうさ」
「あなたは?」
フリーメイドンのメイド服に身を包む彼女を、アリスは怪訝そうに見つめる。
「訳あって詳しく言えないが、少なくともあんたの味方だよ。
逃がしてやるから、ここに隠れてな。
ええっと、栃乙女アリスさん?本名じゃないんだろう?」
「はい。アリスって呼んでください。
あなたは、なんとお呼びすればよろしいでしょうか?」
「あたしのことは、キリサキって呼んどくれ。
あたしも本名じゃない。コードネームってやつさ。
あたしはね、フリーメイドンを内偵するのが仕事。
所謂スパイってわけ」
「それで、どうしてボクを助けてくれたんですか?」
「君が必要だからだ。厳密に言うと、君の体が目的かな」
「そ、それはどういう……!?」
アリスは赤面し、思わず体を抱きしめ、後ずさる。
キリサキはくすりと笑った。
「変な意味じゃないよ。
君、あたしと違って列記とした改造メイドだろ。
しかし、洗脳はされていない。
だから、あたしたちに協力してもらえると思って助けたんだ」
キリサキは手近にあった椅子を二つ、並べた。
キリサキが座るのを見て、アリスも座ろうとする。
しかし、アリスはスカートが不自然に広がって降り曲がることがわかると、
一度立ち上がって尻に手をやり、しっかりと正して座り直した。
「ほほう、不慣れだね。さては、元々男だったか」
「はい。……その、こういう格好、見るのは好きですが、さすがに着るのは恥ずかしいです」
「はは、そうかいそうかい。かわいい坊やだねぇ。
ま、それはともかく。
あたし達はね、フリーメイドンと戦うために活動しているんだ。
戦うにはまず相手を知ること。だからフリーメイドンの強さの秘密を探っていたんだ」
「強さの秘密って?」
「フリーメイドンに改造されたメイドは、普通の人間の何倍もの力を発揮できるんだ。
訓練した軍人でも、一対一じゃ成す術もなくやられるくらいにね。
で、どういう改造を人間に施しているのか、研究するためのサンプルがいる。
うまく洗脳されたフリをして、長期間忍び込んではいるんだけど……なかなか機密部分には近づけなくて。
そこへ君が現れたというわけさ。
君に協力して欲しい。
君の体を解析して、フリーメイドンの強さの秘密を暴きたいんだ!」
「ボクで協力できるなら、ぜひ!こんな体にされて、奴らを許してなるものか!」
「協力してもらえるようだね。一緒に、フリーメイドンの野望を打ち砕こう!」
「はい!」
けたたましいサイレンが、再び鳴り響く。
部屋のスピーカーから、メイド長の声が流れた。
「皆様、逃げたメイドは個室1602に居ることがわかりました。
そこに、我々に反逆を目論んでいるメイドも一緒に居ます。
共に捕らえてください」

「ちっ、見つかったか!」
「ど、どうやって逃げますか!?」
「大丈夫……そこから逃げるよ!」
キリサキが指さしたのは、天井のダクトだった。
廊下から、大人数の足音が聞こえる。
迷う暇は無い。
アリス達はすぐにダクトへ飛び込んだ。

ダクトをかなりの時間移動した。
息が詰まりそうになったころ、ようやく地上へと出る。
地上はもう、満点の星が輝いていた。
そこは、どこともわからない森の中だった。
周囲に人影はなく、野生動物の気配すらなかった。
ひどく静かな森が、かえって耳を痛くした。

「さぁ、早く逃げるよ」
アリスは黙って頷いた。
返事をする気力がなくなっていた。
アリスは脱出した安堵のせいか、それまで気にしていなかった自分が失ったものの重みを、ようやく感じていた。
こんなメイドになってしまっては、今までの生活はできない。
高校に通うこともできない。
ネット上の存在でしかなかった「栃乙女アリス」そのものになってしまったのだから。
もう、自分は自分であって、自分ではない。
――――世界から、自分が消えた瞬間だった。
「どうした、さっきから急に元気がないな。
疲れたのかい」
「いいえ……。いえ、はい。少し疲れました」
「そうか。でも、もう少しがんばって歩いてくれ。
ここはまだ、フリーメイドンの勢力圏だからね」
「わかりました」
アリスは溜息にも似た深呼吸をすると、しっかり前を向いて歩き出した。
その姿を、フリーメイドンの監視カメラが捉えているとも知らずに。

つづく


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