スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

オリジナルSS「メイドトレイター」3話

前回からだいぶ空いてしまいましたが、3話です。
今回は戦いはなし。ある意味、日常回。
それではどうぞー↓

前回のあらすじ
アリスはフリーメイドンの放った合成メイド怪人貫美メロ子を倒したが、その犠牲は大きかった。
自分を逃がしてくれたキリサキの死が、アリスに打倒フリーメイドンの思いを強く決意させるのだった。


キリサキは自衛隊の隊員だった。
アリスは、アリスの改造メイドの体を必要としているのが、自衛隊の研究機関のような所だろうと考えた。
しかし連絡を取ろうにも、アリスには自衛隊の知り合いなんていない。
キリサキに託されたIDカードだけが頼りだが、果たしてこんなカード一枚で相手にしてくれるだろうか。
不安が残るものの、今のアリスには他に選択肢がなかった。
人目につかぬように注意を払いつつ、自衛隊の基地に向かった。
徒歩で距離はあったものの、幸いに市街地から離れていたため、目立つことなく到着できた。
アリスが物々しい入り口を前に立つと、守衛をしているガタイのイイおじさんに奇異の視線で睨まれる。
アリスの姿はただでさえメイド服で目立つのに、戦いでぼろぼろの血だらけだ。
一見して、あまりにも怪しすぎる。
それでもアリスは、IDカードを見せればきっとわかってくれる、と信じていた。
「すいません、ちょっといいですか」
「……なんだ、おまえは。ここは一般人用の入り口ではない。一般人は手続きを踏んだ上、来客用の入り口から入れ」
「えっと、関係者かわからないのですけど、これを見てください」
「ほう……?」
おじさんはアリスからIDカードを受け取ると、少し待っていろ、と言って奥へ消えた。
しばらくして、おじさんは慌てた様子で戻ってきた。
よし、と内心でガッツポーズを決めたアリスだったが、その期待は裏切られた。
「こ、こんなIDカードつかえんっ!」
おじさんは思い切りカードを投げつけた。
「ちょっと、なんなんですか!」
「うるせぇ!こんな奴、うちにはいないんだよ!そんなカード、まさか偽造じゃないだろうな?!」
「なんてこと言うんですか!キリサキさんはみなさんのために、みなさんのために……!
そ、それに、あの時迎えに来たヘリだって、自衛隊のものだったはずですよ!!」
アリスの愛くるしいハイトーンボイスは、おじさんの怒号に負けていなかった。
おじさんはどこか申し訳ないような顔をしているように見えた。
それでも、態度は変わらなかった。
「ヘリだって……?あ、いやいや、知らん!うちのヘリが出動した記録なんてない!」
「そんな、嘘です!どうして、そんな嘘をつくのですか!」
「う、うるさい!知らないものは知らないんだ!だいたい、おまえは何者なんだ、そんな格好で!」
「ボ、ボクはその、えっと………」
「ふん、昼間っから変な格好しおって!いいから、さっさとどこかへ行け!ここには二度と来るな!」
「ひどい……!わ、わかりました!もう、あなた達を頼りません!」
アリスはあまりの仕打ちに腹をたててしまう。
キリサキのIDカードを拾い、大事にしまうと、とぼとぼと基地を後にした。
「……すまん、キリサキ。こうするしかなかったんだ。こうするしか……!」
おじさんは膝をつき、アスファルトを殴った。



「いやあああ、やめて、やめてくださいませ!どうかお許しをっ!!」
一人のメイドが、数名のメイドによって羽交い締めにされ、連れて行かれる。
「暴れないでくださいねー」
「しっかり反省してくださいねー」
連れて行くメイドは、蔑むような目つきで泣きわめくメイドを見つめる。
「ひい、首領様、どうかお慈悲を、首領様、首領様ぁ!」
叫びもむなしく、彼女は『再教育』と書かれた部屋へ連れて行かれた。
扉が閉まってしばらく後、聞くに耐えない悲鳴が響きわたる。
「いだ、いだぁぁぁあぃいいい、反省します、反省しましだああ、だ、だから、許してえぇぇえ!!
ひぎいぃ、誓います、忠誠を誓いますから!身も心もぉお、フリーメイドンのものですぅう!
ぎゃああ!いだぃいいいいぃ!!フリーメイドン万歳!フリーメイドン万歳ぃぃぃ!!!」

悲鳴を聞いた首領は、隣にいたメイド長にワインをついでもらい、一口含む。
「メイドの忠誠心が高まる叫びは、いつ聞いても甘美なものだ」
「まったく、最近の改造メイドは忠誠心が足りません。私ほどになれば、教育部屋など、一日中身も心も喜んでいられますのに」
「それでメイド長、自衛隊への圧力は済んでいるな?」
「ハッ、抜かりありません。これでストロベリーメイドは行き場を失うことでしょう」
「クク、ご苦労だった。だが、奴が脅威であることは変わりない。メロンメイドが破れた時のあの力、侮るべきではない。
……よし!フリーメイドン四天王を呼べ!」
「し、四天王を、でございますか!?」
「そうだ、世界各地の支部にいるだろう。奴らを呼び戻せ!」
「ハッ!かしこまりました!」


アリスはキリサキの最後の言葉を思い出していた。
キリサキはIDカードの裏にメモがあると言っていた。
裏には、とある喫茶店の住所が書かれていた。
アリスは少ない情報を頼りに、喫茶店を探し当てた。
「喫茶店、赤リンゴ……」
通りから外れたそこは、あまり流行ってない雰囲気の喫茶店であった。
どちらかと言えば、スナックのような空気すら感じる。
アリス「(ここにいったい、何があるのかな。)」
疑問の答えを見つけるには、扉を開けるしかない。
アリスは覚悟を決めて、喫茶店の扉を開けた。
カランと、アンティークなドアベルが来客を知らせる。
すると、カウンターに突っ伏していた女性が顔を上げた。
店には他に人はおらず、きっと彼女がここのマスターなのだろう。
彼女は自衛隊のおじさんの時と同じような奇異の視線をアリスに向けた。
「あの、こ、こんにちは」
「あ、う、いらっしゃいませ……?」
アリスが近づくと、彼女は目をぱちくりさせた。
ぼろぼろのメイド服を着た女の子が入ってきたのだから、驚くのも無理はない。
だが、アリスもまた驚いていた。
喫茶店のマスターは、どこか見覚えのある顔だったからだ。
「すいません、キリサキさんにここを頼ってくれと言われて……」
「キリサキに……?」
彼女の表情が変わった。
「あの、これをみてください!」
アリスはIDカードを差し出した。
それを見た彼女は、ぽたぽたと涙を流した。
「そうか……こいつがあるってことは、あの子はもう、いないんだね……」
「なんて言っていいかわかりませんが、キリサキさんは最後まで、立派な方でした……」
「あの子ったら、さすがだね。
それにしても、あんた何者だい。そんなぼろぼろのメイド服を着てさ。
とりあえず自己紹介しようか。あたしは霧島花観。キリサキ……霧島咲弥の姉だよ」
「ボクは栃乙女アリスです。よろしくお願いします、ハナミさん」
「とち……?なんか珍しい名前だね。おいしそうだよ」
「本名では、ないんですけれど。それはボクがどうしてこんな格好をしているのかと関係があります。
まず、ボクは元々男で――」


一通り説明を終えると、ハナミは神妙な面持ちでため息をついた。
「……つまり、そのフリーメイドンって組織を倒さないと、日本中、いや、世界中の人間がメイドさんに改造されてしまうってわけか」
アリスは無言で頷いた。
「なるほどねぇ。さっちゃんたら、また一人で背負い込んでたんだなぁ」
「さっちゃん?」
「ああ、キリサキのこと。あたしはさっちゃんて呼んでいて、逆にあたしは「はなねぇ」って呼ばれていたよ。
ちなみに、キリサキは周りから言われていたあだ名。ほら、霧島咲弥だから。あたしはキリバナって呼ばれていたよ。
なんなら、キリバナさんって呼んでくれてもいいよ」
「いえ、ハナミさんって呼ばせてください」
「あいよ。ならあたしはあんたのことアリスって呼ぶから」
「わかりました。……あの、ハナミさんは自衛隊の隊員、というわけではないのですね」
「そうさ。見ての通り、あたしはしがない喫茶店のマスターさ。
優秀な妹と違って、こんなことしかできないのさ。
でも、何か自分の店を持つってのが将来の夢だったから、一応成功かな。売り上げは聞かないでほしいけどね」
「へぇ、素敵ですね」
「ありがと。さて、難しい話はまた後でするとしてさ。
アリス!あんたお風呂に入りなさい!」
「ほょっ!?お、お風呂ですか!?」
「とーぜんでしょ。いつまでもそんなぼろぼろの血みどろでいて、いいわけないでしょ。
ほら、この店って奥があたしの住まいになっているからさ。まっすぐ行って突き当たりの左が風呂場だよ。
湯船にお湯は張ってないけど、シャワーは出るから、今すぐ体を洗いなさい!」
ハナミが腰に手をあて、反対の手で店の奥を指さす。
これだけ強く言っているのに、アリスは億劫がる。
「でも、お風呂ってその、ぬ、脱ぐん、ですよね?」
「はぁ?当たり前だろ」
アリスは赤面して俯くと、スカートの裾思い切り掴む。
「だ、だって、その、脱いだら、その、えっと、か、体が、見えちゃいます、よね?」
「当たり前だろ」
ハナミはアリスの気持ちが理解できず、眉をしかめ、首を傾げてしまう。
「だから、その、ボク、男なんですってば!」
「いや、女だろ……って、あ、あー、はいはい、なるほど」
ハナミは何か汚いものを見るような目つきに変わる。
「アリスくんって、スケベだねぇ」
「え、ちょ、ハナミさん!?」
「これは相当なむっつりに違いないな」
「なんでそうなるんですかぁ!?」
「もしかして見慣れてないのかな?女の子の体」
「い、妹のでよく見ていましたけど……。って、そうじゃなくて!ボク、スケベじゃありません!
いいです、その証拠に、全裸だろうがなんだろうが、なってやりますっ!」
アリスはいったい、何にムキになっているのか。
わざとらしく力強い足取りで、風呂場へと直行していった。
その姿に、ハナミは自然と微笑んでしまう。
「やれやれ、少しからかいすぎたかな。
でも、あれだけ明るくなれるなら、大丈夫だろうね。
さっきまで、半ベソかきながら話をしていたのに。
せめて、あの子の力になってあげられればいいんだけど。ねぇ、さっちゃん……」
ハナミの握ったIDカードに、ポタリと滴が落ちた。



「(ボクは異次元にいた。何もない、歪んだ空間。波打つ地平線。
上下の無い感覚。どこか水面を漂うような、なのにどこまで落ちていける感覚。ボクは今、異次元にいた……)」
アリスは目を閉じ、精神を異なる空間に旅立たせた。
そうでなければ、全身に走る感覚に、心を支配されてしまう。
アリスはカチューシャをとると、メイド服を脱ぎ捨てた。靴下も問題なく脱げた。
あとは、下着だけだった。
両手の親指を薄いショーツの両端へ通した。
「(ボクは異次元、ボクは異次元、ボクハイジゲン)」
アリスの息が荒くなる。意識するなと言われても、無理だった。
改造メイドは普通の人間より五感が強化されている。全身の触感はより敏感になり、かすかに触れるだけでも強く感じてしまう。
「(ボクは……ボクは…………ボクは……………)」
アリスの紅潮した体から、湯気が立った。
アリスのショーツを握る手が震えた。
「(ボクは………ボクは、スケベじゃなあぁあああああいっ!!!)」
アリスはカッと目を見開いた。
素早くショーツを足から抜き払い、ブラジャーも手早くホックを外した。
「はぁ、はぁ……よしっ!」
アリスはふっきれた。
さっきまでは、女の体の感覚と、慣れない衣装の感覚が相乗効果となって、アリスのアイデンティティをことごとく痛めつけていた。
だがアリスは、男としてのプライドを捨て、感覚を受け入れることで痛みを克服した。
それは、アリスが女としての一歩を歩んだ瞬間でもあった。
「あははは!ボク、スケベじゃないからパンティーはいちゃうし、ブラジャーつけちゃうもーん!!」
アリスはかつての自分を押し殺すように声をあげた。
宣言することによって、自分が女の体になったことをしっかり受け止め、認めてあげるために。
自分だけの、たった一つの体を。



アリスはシャワーを浴びると、心地よさに心理的な安心感も得ていた。
ここに辿り着くまでにあった、辛い現実を洗い流しているかのようだった。
それでも、体そのものは変わらない。
むしろ綺麗になればなるほど、その女性的な柔らかい肉体が際立っていく。
アリスはそれまで感じていた恥ずかしさを抱くよりも、ショックの方が大きかった。
もう、この体で生きていくしかない――――。
変え難い事実は耐えがたい。
受け入れたいと思っているのに、心のどこかで反発している。
その理由を、アリスは理解できないでいた。
きっと、慣れないせいだろう。もっと、この体を好きにならなくては。
そう考えて、気持ちを押し込めるのだった。
「おーいアリスぅー!ここの制服で悪いけど、着替え置いといたから!」
「あ、はい!ありがとうございます!」
アリスはシャワーを止めると、風呂から上がる。
バスタオルを取ると、長い髪をくしゃくしゃにしながら拭いていく。
「(こ、これがハナミさんの用意した服……!?)」
アリスは瞠目する。
そしてその服が意味することは、この喫茶店がただの喫茶店ではないということだ。
アリスはいそいそと着替えた。

アリスは店の奥から慌ただしく現れる。
「ちょ、ちょっとハナミさん!なんですかこの制服!」
登場したアリスの全身は輝きを放ち、シャボンのような淡い背景空間を纏うとともに、なめらかなハープの音が聞こえた。
「何って、メイド服だけど?」
「だだだ、だってこのメイド服、スカート短すぎっ!
ボク、膝下じゃなきゃ認めません!」
アリスは必死にスカートの裾を引っ張っていた。そうしても、今にもスカートの中身が見えてしまいそうだった。
瞳を潤ませるアリスに、ハナミは溜息をついた。
「そんなにイヤなら着なければいいじゃないか」
「それは、その……改造メイドの宿命か、メイド服を着てないと落ち着かないからというか……」
言い訳するアリスに、ハナミは無感情に言い放つ。
「着てみたかったんだろ?」
「ち、ちがっ、こんなえっちぃメイド服、ボクは認めないっ!」
「全否定しちゃうのに着るんだ?」
「ほ、他に着るのがなかったし、それにハナミさんのご厚意を無駄にはできないし、その……」
「ふーん。むしろさ、露骨にイヤイヤ着られる方がご厚意を足蹴にされている気分なんだけどなぁ」
「ち、違います!イヤイヤなんかじゃありません!」
「じゃ、着たくて着たんだな?」
「う、うぅ、そ、それはぁ……」
「正直に答えなさい」
「……はい。とってもかわいいメイド服だったので、着たくてたまらなかったです……」
「……よろしい!
さて、そんじゃアリス君には、うちで働いてもらいたいんだけど、お願いできるかな」
ハナミはにんまりと微笑んだ。
「あんた、行くとこないんだろ。ここの奥、部屋一つ空いてるから、そこ使いなって。
悪い話じゃないと思うんだけど、どうだい?」
「本当ですか!?それは願ったり叶ったりです!でも……」
アリスは目を逸らした。
「ボクはフリーメイドンと戦います。その戦いに、ハナミさんを巻き込むわけにはいきません」
ハナミは、ぽん、とアリスの頭に手を置いた。
「なぁに言ってんだよ。あたしだってね、さっちゃんのことで腸が煮えくりかえりそうなんだ。
あたしには直接戦う力はないけれど、アリス君をサポートすることで、戦う手伝いはしたい。
そんな思いなんだ」
「ハナミさん……」
アリスは嬉しかった。
自分ひとりだけが戦っているわけではないという事実が、嬉しかった。
こうして、アリスは『メイド喫茶赤リンゴ』の店員として表向き暮らすこととなったのだった。
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

最新記事
カテゴリ
プロフィール

VOID

Author:VOID
同人サークルSUZUMUSHIです。オリジナルノベルゲームを作っています。コミケ等で配布予定です。作品に興味がわいたら
公式サイトへ。
(・ω・)ノ

Twitter
公式Twitterです。関係ないつぶやきもしばしば。
最新トラックバック
カウンター
RSSリンクの表示
検索フォーム
QRコード
QR
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。